MBTIの歴史:第15話|この仕事が、これからも人を助けていく

── MBTIという「思想」が生き続ける理由 ──

イザベルが現世にMBTIを託す漫画

🔷この仕事が、これからも人を助けていく

― MBTIという「思想」が生き続ける理由 ―

🌱それは“診断”ではなく、“祈り”から始まった

「違いは、間違いではない」
MBTIが伝え続けてきたこのシンプルな言葉には、100年を超える物語が編み込まれています。

MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)は、
今や世界中で使われる性格理解のツールとなりました。
教育、医療、企業、恋愛、キャリア――
あらゆる場面で人々の“自己理解”と“他者理解”を支えているMBTI。

けれどその原点は、統計でも、分類でも、マーケティングでもなかったのです。
始まりは、「理解したい」という一人の母のまなざしでした。

この最終話では、MBTIが“なぜ今も生き続けているのか”、
そして“この先もなぜ必要とされるのか”を、ユング・キャサリン・イザベルの思想を紐解きながら見ていきます。

🔍ユングが見た「人の奥底」

MBTIの起点にあるのは、スイスの心理学者カール・グスタフ・ユングの「タイプ論」。
彼はこう問い続けました。

「人は、なぜ同じ世界を違って見ているのか?」

ユングは、“行動”ではなく“認知”の違いに注目しました。
彼にとって重要だったのは、「その人が世界をどう見ているか」「どう意味づけているか」。

・外向/内向
・思考/感情
・感覚/直観

これらの“心の使い方”のクセ=タイプに注目することで、
表面的な違いや誤解の背後にある「内なる地図」を解き明かそうとしたのです。

「認知の違いは、争いの火種ではなく、可能性の入り口である」
それがユングがMBTIに託した“哲学”でした。

👩‍🏫キャサリンが信じた「違いは、育てられる」

アメリカの教育者キャサリン・クック・ブリッグスは、
ユングの理論に出会ったとき、静かにこう呟いたといいます。

「これは、私がずっと探していたものだわ。」

キャサリンがMBTIの根幹に込めたのは、「人を知りたい」「人を育てたい」という願いでした。
教師として、母として、彼女は思っていました。

・子どもはそれぞれ違う「好奇心のかたち」を持っている
・教育は、その違いを活かす土壌であるべきだ

だからこそ、タイプ論を「人を分類するため」ではなく、
「その人らしい伸ばし方を探すためのレンズ」として活用したのです。

彼女の思想は、家庭教育・創作・観察記録といった、
“生活に根ざした視点”から生まれた、あたたかい心理学の出発点でした。

✍イザベルが証明した「違いは贈り物」

そして娘イザベル・ブリッグス・マイヤーズは、
この思想を“世界に届くかたち”へと翻訳しました。

彼女は心理学者ではなく、統計家でもなかった。
小説家であり、母であり、普通の市民でした。

「だからこそ、私は“使える言葉”でMBTIを作らなければならなかったの」

何度も専門家に嘲笑され、研究機関から契約を打ち切られ、
学術界からの冷たい視線にさらされながらも、
彼女はブレなかったのです。

・MBTIを現場に届ける
・誰もが“自分らしさ”を肯定できるツールにする
・性格の違いが、誤解や衝突ではなく、協力や共感に変わるように

その結晶が『Gifts Differing(ギフツ・ディファリング)』。

“人はそれぞれ異なるギフトを持っている”
というMBTI最大のメッセージを、彼女は病床から世界に届けたのです。

🪞MBTIは「性格を決めるもの」ではない

近年、SNSや診断ブームの影響もあり、
MBTIは時に“ラベル”のように使われることがあります。

「INFPだから疲れやすい」
「ESTJは厳しいタイプ」
「ENFPは自由人」など…

それらは半分正しく、半分誤解です。

MBTIは、本来「型にはめるため」の道具ではありません。
むしろ、型から解放するための思想なのです。

「自分を知って、他人と比べずに生きていい」
そう言ってくれる“もうひとつの地図”が、MBTIなのです。

🔚この仕事が、人を助け続ける限り

イザベルは、晩年の講演でこう語りました。

「私がいなくなっても、この仕事が人を助け続けるなら…
それが私の願いです。」

MBTIは今も、
世界中の教育現場・企業研修・カウンセリング・キャリア支援などで活用されています。
そして今、あなたがこの文章を読んでいることも、
MBTIという“やさしさの言語”が生き続けている証拠なのです。

🎁 あなたへ渡された贈り物

MBTIというツールは、もしかしたら一枚の診断結果では終わらないかもしれません。
それは、“自分と他者の間に橋をかける”ための思想です。

あなたは、あなたでいい。
他人も、他人でいていい。
違いは、尊重し合うためにある。

この思想を生み出した人たちは、特別な天才ではありません。
「人を理解したかった」ただそれだけの、母と娘と心理学者でした。

だからこそ、この物語は、
今、違いに悩むあなた自身の物語にもつながっていくのです。