MBTIの歴史:第1話|ユング誕生編

── 「無意識」と出会った少年が見た、心の裏側の世界

ユングが世界の裏側に気づくシーンの漫画

🌍MBTIの旅は、ある少年の“違和感”から始まった

いまやMBTI(Myers-Briggs Type Indicator)は、就職活動、企業研修、恋愛診断にまで広く活用される「性格タイプ理論」の代名詞となっています。

しかし、その原点を辿ると、意外なほど静かで個人的なところに行き着きます。

始まりは——スイスに生まれた、一人の少年の心の中でした。

彼の名は、カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung)。

のちに“無意識”という概念を世界に広め、MBTIの元となる「タイプ論」を生み出すことになる人物です。

🧒心の“裏側”を感じていた少年ユング

少年時代のユングは、物静かで空想好きな子どもでした。

クラスの中で目立つことはなく、いつも何かをじっと考えているような佇まい。

彼は子どもながらに、「この世界には、目に見えているもの以外の“何か”があるのではないか」と感じていたのです。

善と悪、神と人間、生と死。

それらの根源的なテーマに幼くして惹かれ、ひとり思索に耽ることが日常でした。

そんなある日、彼の中でふとした“ひらめき”が生まれます。

「目に見えるものの“裏側”に、本当の答えがある気がする——」

この直感は、少年ユングの心に深く根を下ろし、生涯にわたる問いとなっていきます。

🎓「無意識」との出会い——魂が震えた瞬間

やがて青年になったユングは、医学と精神病理学の道を志します。

その過程で彼は、運命を決定づける“ひとつの言葉”に出会いました。

それは、ある日の講義で教授が何気なく使った言葉——「無意識(unconscious)」。

その瞬間、ユングの中に雷のような衝撃が走りました。

「この言葉だ!ずっと探していたのは、これなんだ!」

まるで、自分の内に存在していた“名前のなかった感覚”に、ようやく言葉という形が与えられたようでした。

この出会いは、彼の人生の方向を決定づけます。

その後、彼は精神科医として病院に勤めながら、人間の深層心理と向き合い続け、

ついには「タイプ論(心理学的類型)」という理論を打ち立てることになります。

🪞MBTIは、ラベルではなく“問い”から始まった

MBTIと聞くと、「あなたは○○タイプです」と診断される“ラベル”のような印象を持つかもしれません。

しかし本来、それは“答え”を与えるものではありませんでした。

MBTIの源流にあるのは、ユング自身の問いです。

「自分は何者なのか?」「人間の本質とは何か?」

そしてその問いは、静かに、しかし確実に——現代を生きる私たちの心にも響いてくるのではないでしょうか。

なお、MBTIという枠組みが誕生するのは、このユングの理論から数十年後、アメリカの母娘によって実用化されたときのことです(この続きは次話以降で描かれます)。

🔚あなたの中の“旅”も、もう始まっているかもしれない

ユングが「無意識」と出会ったあの日。

それは、ひとりの少年の物語であると同時に、現代に生きる私たちが「自分自身と向き合う旅」の出発点でもあります。

MBTIの旅は、“あなたの無意識”からも始まっているのかもしれません。